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19. 変形を扱う幾何学

19.4 橋梁工学固有の問題


19.4.3 影響線解析は橋梁工学固有であること

 影響線(influence line)を求める、さらに、これを利用する計算の全体は、橋梁工学固有の構造解析です。そもそもの解析の出発は、幾つもの大きな車輪荷重を持った列車が鉄道橋を通行するとき、どの走行位置で、どこに最大応力や変形が出るかを求めることに目的がありました。機関車は、車両を牽引しますので、或る程度の重量を必要とします。日本最大の蒸気機関車は、鉄道マニアからデゴイチの愛称で親しまれた1936年に設計されたD51型です。この機関車の設計重量は130tもあり、これが重連で走行するとして鉄道橋の活荷重に使われていました。動輪の設計軸重が18t(輪重は、この1/2)であることから、この活荷重体系をK18と呼んでいます。その当時の道路橋の設計で使われた設計用自動車荷重は、1台12t、道路舗装に使う転圧機(ロードローラー)の方が重く、14tでした。現在使われている普通のダンプカーは、過積載しないとすると1台20tですので、D51が如何に大きな荷重であるかが分ると思います。したがって、実際の機関車動輪の並び寸法と重量とを元に、最大応力になる場所と積載位置を詳細に探索することに大きな計算努力が払われました。構造力学では、応力の大きさの大小に注目する研究者が多いのですが、応力は直接に確認する方法がありません。歪みや変形を測定することで、間接的に理論を証明するしかないのですが、実物に当たって測定する機会はあまり多くありません。これに対して、橋梁の現場は、全体寸法だけでなく、微小変形とその累積と直接に向かい合います。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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