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19. 変形を扱う幾何学

19.4 橋梁工学固有の問題


19.4.2 変形を制御する設計

 橋梁は、重量も大きく図体が大きいので、大きな変形が起きないように制限を設けます。大体の基準として、全設計重量が載るとして、長さ(支間)の1/1000前後に撓みを抑えます。100m長さの橋では最大で10cmの撓みです。これは、相対的には微小な変形です。橋梁は、振動することが体感できます。30m以下の支間では、その振動振幅は1mmを越えないのですが、人が受ける感覚はcm単位の大きさと錯覚することが多いようです。構造物を構成する鋼材は、最大応力で利用するときの歪みが約1/1000です。この値が撓みの制限とも関連します。橋梁は、建築構造に較べると、想像以上に大きく変形する構造物です。架設のとき、自重による変形があって、後から取り付ける部材が所定通りの位置決めに納まらないことも起こることがあります。それを修正しようとして落橋事故になった事例もあります。部分的には微小の長さ変化であっても、全体として累積されると不規則な変形が目立つこともあります。眼に見えるほど大きくはないのですが、例えば、太陽に照らされた側が伸びて、言わば、向日葵のような挙動も示します。超高層ビルは鉄骨で骨格を構成します。完成後は外側がお化粧されますが、建設段階では鉄骨がむき出しになっていて、日照の影響を受けて変形します。霞ヶ関超高層ビルの建設のとき、垂直軸のズレが測定されて大騒ぎになったことがあります。吊橋では、ケーブルの長さが夏と冬とで変化することで、支間の中央の高さが変ります。瀬戸大橋では列車の通行を長手方向から観察すると、眼でみても分るほどの変形がでます。しかし、吊橋を側面から見る限りでは、殆ど変形は分りません。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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