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19. 変形を扱う幾何学

19.3 曲線を扱う数学的方法


19.3.7 自由曲線を考える

 初等幾何学では、円以外の平面曲線を扱いません。楕円・放物線・双曲線は、二次曲線に分類します。曲線の性質を代数式で提案することもできますが、作図は簡単ではありません。実践的に曲線を描くときは、曲線上に載る幾つかの注目点を決めておいて、それを折れ線で結んで近似させます。滑らかに見えるようにするには、注目点の間隔を狭くします。数式が提案できない任意の形状の曲線を自由曲線と言います。そのため、自由曲線を近似的に表す実践的な方法を工夫することになります。工業製図では、飛び飛びの代表点を滑らかに結んで曲線を描く道具をしない(撓い)定木と言います。英語はspline(スプライン)です。種々の自由曲線が描けるように、専門用途に合わせた曲線定木があります。手描きの製図技法では、3ないし4点を通るようにしない定木か曲線定規を当てて、連続した曲線に繋ぎます。このような操作で中間の点の位置を決めることを内挿と言います。最も単純な内挿が直線を使うことです。滑らかな曲線で内挿に使う式は三次式までが実用されます。数学的に考えると、n点を滑らかに繋ぐ(n−1)次式を提案したいところですが、四次式以上の代数式を決定する方法が面倒ですし、また、それが描く曲線も現実的な予測とは一致しないので、実用にはなりません。内挿は種々の場面で現れますので、コンピュータを使って自由曲線を描く実用的な方法が使われるようになりました。最初に応用されたのは、自動車のボディーラインの滑らかな曲線をコンピュータ制御で作成することです。フランスの自動車メーカー、ルノー社の技術者ピエール・ベジェ (Pierre Bezier)が考案した。巧妙な方法が有名です。平面図形ではなく、立体的な位置関係の曲線に応用するときは、参考にする点を位置ベクトルで表すのが便利です。立体的な自由曲線を投影図で見ると、投影方向次第では松葉返しのような図が得られることがあります。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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