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19. 変形を扱う幾何学

19.3 曲線を扱う数学的方法


19.3.6 つる巻き螺旋を考える

図19.6 蔓巻きらせん
 最初、捩れのない真っ直ぐな、円断面の弾性針金を考えます。この弾性針金を円柱に巻き付け、空間曲線の螺旋に構成することを想像して下さい。針金に捩れを加えないで、端の方から素直に円柱面に押し付けるように曲げていきます。そうすると、針金円断面の稜線と円柱との接触線がずれていきます。つまり、円柱に対して、針金は相対的に捩れていきます。これが、曲線としての幾何学的な捩れです。一方、薄板のリボンを円柱に螺旋状に巻きつけることを考えて下さい。リボンに注目すると、リボン面が常に円柱に接するように、折り(曲げ)を入れます。その折れ線は、リボンに対して斜め、円柱から見れば軸方向と平行です。斜めに折ることは、リボン長手方向に対して曲げと捩れを加えることの合成です。丸い断面の針金を素線とし、これを撚り合わせてワイヤロープに加工するとき、縄をなうように、素線を逆向きに捩るようにして巻きつけます。ケーブルカーに使うワイヤロープは、ロックドコイルと言い、ケーブル表面を滑らかに仕上げた別断面形状の素線を表面に使います。この素線は、リボンを巻きつける原理と同じように、向きを揃えて撚り合わせます。螺旋構造は、身近には螺旋階段でも見ることができます。手すりなどが空間的な螺旋を描きます。角張った部材断面で、向きを揃えて滑らかな曲線に仕上げた苦労の跡を見ることは、少し意地が悪い見方かも知れません。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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