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19. 変形を扱う幾何学

19.2 静定と安定


19.2.7 形の変化を長さの変化で捉える

 静定で安定なトラス構成で、どれか一つの部材長さが少しでも変ると、全体形状が少し変ります。別のトラス部材の長さに影響がある場合、その部材が不静定部材です。人の骨格は関節で繋がっています。骨の長さは一定ですので、関節の回転で動くのですが、筋肉が長さ変化を制御する部材の役目を持っています。もう少し構造力学的に言うと、骨は圧縮材、筋肉は引張材としたトラス構成で力を伝えます。何かの形が変化することを定量的に扱うときは、二つの注目点間の長さを、変形前と変形後と測定して比較することが基本です。部材の長さの変化(微分的)があると、どのような全体変形(積分的)が起こるかの解析は、幾何学的に扱います。逆に、全体変形があると、部分としての長さ変化がどうなるか、と対に考えます。構造力学は、長さの変化を、材料に作用している力と関連つけることが課題の一つです。実用的な構造物では、大きな変形が起きるのは破壊ですので、通常は変形の方を、相対的に微小の範囲にあると仮定して、専ら力の性質の解析(力学)を主題とします。いままでの説明から分るように、幾何学の扱いが非常に重要です。構造解析では、幾何学的な条件を適合条件(compatibility condition)と言い、力と変形との関係を弾性条件(elasticity condition)と言います。もう一つ、力の釣合条件(equilibrium condition)があります。静定トラスは、弾性条件を使う必要がありません。不静定トラスは弾性条件を考えないと解析できません。一般的な弾性体は、巨大な不静定トラス構造物の性格がありますので、かなりの簡略化したモデルにしないと実用解析に載りません。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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