目次ページ  前ページ   次ページ

19. 変形を扱う幾何学

19.2 静定と安定


19.2.6 短い部材で長い支間を構成するトラス構造

図19.4 トラス桁の標準的な組み方
 小さな建築構造は、木材をそのまま柱や梁として使って空間を構成します。しかし、柱の間隔を広げ、より広い空間を構成させたいときは、トラス組みのアイディアが必要です。三角形をした屋根構造は、三角形に組んだトラス構造になっています。鉄骨トラスで屋根を組むと、木造とは見た眼が違う軽快な構造で広い空間が構成できます。戦後、室内体育館を兼ねた講堂の建設ブームが起きました。東京ドームに始まる大空間のスポーツ施設は、その延長にあります。しかし、二階建て以上の木造学校建築のように、長い支間を横梁で結び、その上にも広い空間を必要とし、大きな重量が載っても安全であるようにする木造建築は、西洋建築の技法に学ばなければなりませんでした。近代に入って、鉄を利用した巨大構造が建設されるようになって、トラス形式で長い梁構造に構成する組み合わせ方法に、種々のアイディアが発表されてきました。パリのエッフェル塔は、高さ方向に挑戦した構造です。橋梁構造としてのトラス組みは、力学的に材料を能率良く組み上げる形式として、ハウトラス・プラットトラス・ワーレントラスが標準になりました(図19.4)。いずれも、その形式を特許申請した技術者の名前で呼ばれています。マクロに見れば細長い一本の独立した部材扱いをしても、ややミクロに見るときは、トラス構成でモデル化します。このことを区別したいとき、しばしばトラス桁(trussed girder)と言うことがあります。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ