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19. 変形を扱う幾何学

19.2 静定と安定


19.2.1 三角形を基礎に考える

 初等幾何学では、三角形の合同条件を習います。二つの三角形を眼で見れば、大まかですが、一瞬で、合同か、そうでないかが分ります。しかし、二つの三角形について、頂点の座標値を媒介として合同を判定しようとなると、数値計算の手順(プログラミング)がかなり面倒です。3頂点の位置は、平面だけでなく、立体的な場合もあります。座標数値のしきい値7.5節参照)を緩やかに決めておかないと、合同判定は殆ど成立しないことが起こります。正確さは、辺の長さをデータとして使い、定木とコンパスを使う初等幾何学的方法で作図ができることを要件とします。三角形を順に繋いで、全体の網目構造を構成するようにします。三角形の作図は、既に確定した辺の両端二節点から、新しい二辺の長さを与えて三番目の節点を決めるようにして、三角形構成を増やします。図が複雑にならないように、新しくできる辺は、前に作図した辺と交差しないようにします。この手順のとき、任意に選んだ二節点を結ぶ辺がなくても、仮に辺が在るものとして、追加の二辺だけを考えて、新しい節点を決めることもできます。つまり、節点が一つ増えると辺が二つ増えます。この網目構造の正確なデータは、辺の長さと、それがどの節点と節点とを結ぶか、で指定します。このとき、節点の数Nと辺の数Mとに、M=2N−3の簡単な関係が成り立ちます。単独の三角形はM=N=3です。立体図形は、三角錐状に骨組みを構成します。新しい節点は、三辺を使って決めますので、同じような関係はM=3N−6と得られます。単独の三角錐は、M=6、N=4です。この構成順を踏まえると、頂点と辺とに番号を付ける約束ができます。コンピュータを使って複雑な網目構造のデータを保存するときは、プログラミングでは実質的に一次元配列でデータが並びます。この作業手順を検査すれば、重複して辺を決めたことや、後の項で説明する不静定な余分の辺を特定することができます。計算幾何学の課題では、乱数を使って複数の節点座標を先に与えておいて、これらを三角形で繋いで網目構造に構成する問題があります(ドロネー図参照)。構造力学的に見ると、不静定構造ですので、辺が余分に使われています。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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