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19. 変形を扱う幾何学

19.1 空間構成の幾何学


19.1.2 トラスの計算は幾何の計算を踏まえること

 トラスは、産業革命によって安価で大量の鉄鋼材料が供給できるようになって、開発研究された構造形式です。鉄道橋に応用し、一般の人が眼にすることが多かったので、鉄橋と呼んで愛着を持たれてきました。幾何学的には三角形の集合で構成します。任意の立体的なトラスは、三角錐状の組み方も考えられます。力学計算に便利なように、実用的には平面トラス組みの面単位で、マクロに見れば紙細工のような立体に組み上げます。立体的な位置関係にある部材の長さの計算、立体的な部材の接合を考えた細部構造の設計は、かなりの経験的な知見を必要とします。その基礎的な計算原理は、初等幾何学です。構造解析では、連続的な材料要素を使っても、構造部材の幾何学的な骨格形状を直線材の組み合わせでモデル化します。トラスは、原理的に最も純粋化した構造です。板の変形などは、微分方程式を使って連続体としての解析もします。しかし、具体的に応力や変形を求めるときは、離散的な座標位置で計算しますので、最初から有限個数の注目点を決めておいて、それら結ぶ網目状の骨組み構造でモデル化してもよいわけです。これを発展させた方法の一つは、O.C.Zienkiewicz(1921-2009)が1960年代始めに発表した有限要素法(FEM: finite element method)です。FEMに限らず、構造力学は、幾何学と織り成す多様な応用研究が開発されてきました。クレモナ(1830-1903)のトラスの図式解法は、その古典的な手法です。しかし、通常、幾何学的な性質の方は、計算技法に組み込まれて処理しますので、今までは特に幾何学、それも計算幾何学としての視点はありませんでした。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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