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19. 変形を扱う幾何学

19.1 空間構成の幾何学


19.1.1 部品を組み合わせて隙間のある空間を作ること

 構造(structure)と言う言葉を素直に考えるときは、幾つかの部品相当の材料を組み合わせて、眼に見える立体的な形状になった全体を指します。自然界には多様な構造があふれています。動植物が構成する構造は、どのような遺伝的な要因が働くのかは判りませんが、貝殻でみるように、幾何学的に美しい造形が少なくありません。人間も動物ですが、歴史的に種々の巨大造形を残してきました。最も単純な構成は、単に材料を積み上げる方式の造形です。古墳やピラミッドがその代表と言えるでしょう。高さを競うと、柱状の構造になります。これらの造形は、表面に図柄を加工する程度であって、内部の空間が無いか、有っても全体に較べれば狭い構造です。ギリシャのパルテノン神殿のような大きな全体空間を構成したいとなると、柱と梁を使う必要があります。しかし、梁部材は曲げの引張応力が出ますので、石材を梁部材として使うことには限界があります。それに代わるのがアーチ状の構成です。ローマの水道橋や、イスラム教会のドーム構造がそうです。これは相当な経験技術を必要とします。木材は自然の素材として身近にあり、曲げ材としても実用上十分の強度があります。漢字の「構」は、木を使って形を組み上げる意義の文字ですが、構造力学の用語ではトラスの意義に当てる使い方をします。
2009.7 橋梁&都市PROJECT

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