目次ページ  前ページ   次ページ

17. 図形の諸量

17.2 単純要素への分割と合成


17.2.1 制作と製作を区別する

 彫刻は、立体的な素材料から手作業で部分を削り取る技法で造形します。切り絵は、素材を用紙としたものです。どちらも、複雑な一続きの全体構造を、一つの素材から造形することに芸術的価値があります。また、同じように見えても、細かく見れば同じ形状は二つとありません。この過程には制作と当てます。機械加工で材料から形状を造るときは、工具などの位置制御を幾何学的に行わせますので、形状そのものも幾何学的です。この過程は製作の用語を使い、再現性のある造形の意義を持ちます。複雑な構造は、より単純な形状部品を組み合わせます。自動車を例とすると、何万点もの部品の集積で構成します。すべての部品を自前で製作することは理想です。しかし、本体工場は、他の製作工場から多くの部品を調達して、組み立てに特化するように変ってきました。下請会社や協力会社が無ければ、本体工場そのものが成り立たなくなりました。世俗を捨象して、計算幾何学として造形問題を扱うことが幾何モデリング、または形状モデリングです。ただし、その応用は世俗と関連しますので、学問的な興味があっても、あまり特殊な形状を考えません。例えば、立体幾何学を考えるとき、プラトンの5個の正多面体は興味のある題材ですが、造形材料として扱うのは正六面体だけです。造形を考えるエンジニアリングでは、寸法数値を必要とします。プラトンの正多面体やその他の準正多面体の寸法を表す数値を知りたいとしても、実務での需要がありませんので、それが書いてある参考書を見つけることに苦労します。
2009.5 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ