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16. 長さと面積

16.3 面積に関連した問題


16.3.4 二次モーメントはさらに力学的な量であること

 二次モーメントは、慣性モーメント(moment of inertia)とも言い、言葉から類推できるように、力学的には回転し易さの指標です。或るマスMが半径rで回転軸回りにN回/秒で回っているときの運動エネルギーは、Mr2N2/8π2です。慣性モーメントは、質点集合全体が一定の密度である場合、体積全体についてr2の積分です。フィギュアスケートの回転演技で、身体全体をスリムにすると早い回転になり、手足を広げると慣性モーメントが大きくなって同じ運動エネルギーでも遅い回転に落ちます。構造物の梁の設計では、平面図形の慣性モーメントの計算が必要です。これは、力学的な意義としては、単位厚さの平板を立体的に扱う計算です。梁断面図形についての慣性モーメントが大きいと、同じ曲げモーメントに対して回転角度、ここでは曲率、が小さくなり、曲げ変形が小さくなります。設計では、なるべく材料の使用量を減らし(断面積を抑え)、慣性モーメントが大きくなる形状を提案します。その最も標準の形状が英大文字のI断面です。柱は単独では二方向に同程度の曲げ剛性を持たせるように部材断面を提案しますので、パイプ状の断面に構成するのです。材料も形状も異なる素材を組み合わせて複雑な断面に構成するとき、個別の基本形状の断面積・重心位置・慣性モーメントから全体の慣性モーメントを計算しなければなりません。基本的な図形についてのこれらの諸量は、デザインマニュアルに計算式が紹介されています。型鋼などは、製品のカタログにこれらの諸量が載りますので、その見方や使い方について実務的な知識が必要です。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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