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16. 長さと面積

16.3 面積に関連した問題


16.3.3 重心を通る線は図形の面積を二等分する

 初等幾何学の基礎的公式として、「三角形の重心は、頂点から対辺の中点を結ぶ線の交点として得られる」と習います。しかし、これは針金で三角形を構成した場合の重心位置とは同じになりません。一般的な図形の重心位置を計算幾何学的に求めるには、図形の一次モーメント(static moment)の理解を必要とします。これは、力の釣合いと関連した力学的な概念です。高校までの基礎教育段階では、釣合い式としての扱いは普通に見られても、モーメントの用語は物理系の専門教育の場で現れます。力学的に扱う図形は密度が均質な材料の集合です。一次モーメントは、質量を定数項、座標値を変数として乗じた量で定義されますので、代数的な線形計算が応用できる数学量の性質があります。重心位置の座標は、これを未知数として形式的には連立一次方程式を解く問題になりますが、線形計算の応用で簡単に求まります。構造物の設計計算では、部材断面の幾何学的性質の数値計算をしますが、このときに断面一次モーメントの計算が現れます。材料の弾性係数(ヤング率)の違いは質量の違いとして図形に重みを付けます。鉄筋コンクリート部材の断面計算、さらには橋梁の合成桁の断面計算に応用されています。実践的な重心計算は、計算手順の定型があって、構造計算書で見ることができます。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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