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16. 長さと面積

16.2 距離に関連した問題


16.2.3 等距離になる点の軌跡を求める問題

図16.3 海岸線から等距離線を描いた地図
 初等幾何学では、2点間の垂直二等分線を引くことが、基本的な作図法の一つです。これを距離の問題として見ると、2点まで等距離になる点の集合です。軌跡とも言います。円は一点からの距離が一定である点の集合です。平行線は、一つの直線から等距離に在る点の集合です。放物線は、与えられた一つの直線と一つの焦点までの距離が等しい点の集合です。古い5万分の1の地形図では、岸で区切られた水面領域に、岸線からの距離が一定になるような装飾曲線が引かれていました(図16.3)。等深線と紛らわしいので最近の地図では描いてありません。幾何学的な作図原理は、その距離を半径とする円を海岸線に接するように移動させ、円の中心の軌跡を描くことです。


図16.4 ボロノイ図とドロネー図から境界線を決定する
 海を挟んで二つの海岸線が有る場合、両側の海岸線から等距離になるように引く曲線は、両岸の勢力圏の境界です。県境の設定などで、しばしば政治問題になりますし、国際的には排他的経済水域と領土問題とからんで深刻な紛争を引き起こします。計算幾何学の問題として扱うと、ボロノイ図(4章12節参照)とドロネー図とを重ねて描くと、両岸から等距離の点を結ぶ境界線を決定することができます(図16.4)。点を結ぶ経路に注目すると、一筆書きや迷路の問題もあり、知的な興味を引きますので、数学者が興味を持って取り上げ、この全体をグラフ理論と括っています。ただし、トポロジー(位相幾何学)的に扱う場合は距離を捨象しますので、計算幾何学とは見方が違います。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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