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16. 長さと面積

16.1 長さを測る課題


16.1.6 距離の表し方は種々あること

図16.1 マンハッタン距離の計算
 現実の道路網の形状は、幾何学的な座標軸を表すようにはなっていません。道路、つまり、線分単位で道筋をたどるとして、ある場所から別の場所へ行く道順は種々考えられます。斜めの位置にあるときは、直交座標系ならば階段状の道筋になり、道筋の取り方に関係なく一定です。この全体距離のことを通称でマンハッタン距離と言います(図16.1)。ニューヨークのマンハッタン地区では道路が方眼状に切られていますので、道路に沿って或る交差点から目的地の交差点までの距離は、道筋の取りかたに関係なく一定になることからそう呼ぶようになりました。日本ならば京都距離?とでも言いますか。ただし、交差点を外れた位置から別の位置に、コの字を描くように行く条件を考えません。図形としての最短経路は、座標軸を斜めに横切る直線になります。近道をしたいとして、この直線からなるべく逸れないようにギザギザの道順を選んでも、マンハッタン距離は変りません。しかし、角を曲がる回数は増えます。

図16.2 放射道路と周回道路モデル
都市計画道路として、パリの凱旋門付近、東京の東横線田園調布駅周辺のように、曲座標を応用して同心円と放射状の直線道路を構成する例があります(図16.2)。この市街地では、或る場所から別の場所に行く道筋の選び方に悩みます。東京、また一般的に言えば城下町は、巨視的(マクロ)に見れば、城を原点とした放射状に延びる街道と、同心円状の環状道路で構成されています。地理に詳しくないと、或る場所から別の場所に行く最短経路を決めるときに困ります。逆に、わざと迷路になるように設計された城下町もあります。パリ市内で見通しのよい広い直線道路は、暴徒化した群集を鎮圧するため、大砲を据えて反撃することを考えたものだと、フランス人の友人が説明してくれました。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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