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16. 長さと面積

16.1 長さを測る課題


16.1.3 座標幾何学は長さを数値化して扱う幾何学

 学問としての初等幾何学は、座標系を使いません。図形の寸法は、適当な長さを基準として(長さを抽象化して)、相対的に、例えば3:4:5の辺比を持つ三角形、のように表します。したがって、実数の代わりに整数を使う分数でも表します。そうすると、数値的には、正方形の対角線の長さや円周のように、無理数でしか表すことができない問題のときに困ってしまうのです。単純に距離と言うときには負の数を使いませんが、座標系を使うときは、座標軸に沿って原点から測る距離に±の符号を付けた表し方もします。向きや位置の左右・上下・裏表は位相幾何学的な区別に使いますが、代数学的には、この区別を正負の符号で表します。そこで、筆者は、しばしば、符号付き距離の用語を使っています。座標系は、長さを測る場所や向きを定義するシステムと言うことができます。座標系には、極座標・円柱座標・天球座標・曲線座標・曲面上の座標・斜交座標などなど、種々の方法が応用されていますので、距離の測り方も種々あります。座標系の約束そのものがゆがんでいる曲線座標では、別の座標系で表した距離と整合しません。極座標で扱う角度のラジアン表示は、単位円の円周に沿って測る長さですので、同心円上の円周に沿って測る距離とは違います。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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