目次ページ  前ページ   次ページ

16. 長さと面積

16.1 長さを測る課題


16.1.2 長さは主観的な概念であること

 人が長さを認識するときは、自分の身体の寸法を尺度の基準にして主観的に判断しています。これは長さをで理解していることです。背が低かった子供時代、広々とした空間と思っていた場所が、大人になってその場所に行くと、小さな空間であったことを実感することがあります。長さの大小を客観的に判断するには、何かの長さを単位として決めておき、その単位を基準にして相対的に理解し直します。長さは、「高さ・深さ・幅・奥行き・径・差し渡し・東西・南北、上下、左右」など、長さを測る場所や向きの言葉を添えて数値を言い、さらに単位を付けます。長さは時間の多少にも言い、長さを時間に置き換えて言うことがあります。星までの距離を光年単位で言うのがそうです。距離と言うときは、二点間の隔たりの意味を含んだ長さを指します。社会生活では、駅から歩いて10分、車で1時間、などの言い方もあります。交通費の大小のような、経済的な尺度で測ることも行われます。直線距離では短くても、遠回りの距離を言うこともあります。形状の寸法は、物差しを使って測る長さを言うのですが、巻尺を使ってウエストを測る場合のように、必ずしも真っ直ぐに測るだけの用語ではありません。真っ直ぐと思った空間が、レンズを通して見ているように、実は曲がっているのだ、と言う議論もあります。相対性理論では、時間と長さが速度によって変る説明があります。長さは種々の測り方がありますので、物理的・幾何学的・数学的に正確な長さを表したいときは、測り方の約束を神経質に定義することから始めなければなりません。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ