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16. 長さと面積

16.1 長さを測る課題


16.1.1 応用幾何学と言う概念を意識すること

 歴史の古い初等幾何学は、中学・高校の数学で学習しますが、教養的学問扱いをしていますので、一般の人は、現実にそれが役に立つ場面を、すぐには思いつかないと思います。科学(science)または純粋科学(pure science)と言うときには、ものごとの真理を追究する方向の学問を指します。余計なものを除いて(捨象と言います)、言わば、美味しいところを取り出します。現実に役立てる研究をする場合は、考え方の向きを逆にした、応用科学(applied science)、または応用技術(technology)と言います。総合大学の学部構成では、理学部が純粋科学寄り、工学部が応用科学寄りの学科構成をしています。そのため、応用物理・応用化学・応用数学の名称を付けた学科名は、工学部に属するのが普通です。数値計算法は応用数学として研究され、コンピュータを使う数値計算法が多くの専門ごとに応用されるようになりました。計算**学(computational ****)の名称を多く見かけるのがそうです。この連載シリーズで使っている計算幾何学の用語は、その一つです。「学」の用語を付けますので、やや取り澄ました研究を扱う傾向があります。幾何学の実学的応用の一つが測量学です。ここでは、現実的な長さの測定が基本技術です。長さを扱う計算方法の研究、例えば、面積や体積の計算は、計算幾何学の主題の一つです。力学、その応用としての応用力学、そのまた応用としての構造物の設計では、図形の慣性モーメント・慣性半径・断面係数・主軸の向きなどの計算を扱いますが、幾何学の視点で取り上げることはありませんでした。
2009.4 橋梁&都市PROJECT

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