目次ページ  前ページ   次ページ

15. 隠れ面と隠れ線処理

15.1 装置に依存する処理


15.1.6 隠れ線と隠れ面処理は装置依存の性格があること

 コンピュータを使う作図ソフトウエアは、ペンを使い、線図を主体とする手描き製図をシミュレート(擬似化)し、それを作図装置に描かせることが目的でした。その作業手順を考えることがプログラミングの課題です。ここで使うコマンドまたは命令語の約束が、グラフィックス言語です。これは、グラフィックス装置固有の機能を使うように工夫されています。ペンを使うプロッタでは、その基本的な命令は、線を引くことです。モニタの場合には、或る領域を何かの色や紋様で塗りつぶし命令が追加されます。ペン描きでは、塗りつぶし作業に手間が掛かりますが、グラフィックスモニタでは、これが比較的簡単にできます。グラフィックスのプログラミングでは、この二つをline drawingとpaintingと区別します。モニタは、テレビの画面のように、線図ではなく、色調を変えた濃淡図表現を使う装置です。ただし、レーザプリンタやインクジェットプリンタが開発されるまでは、モニタ上での表示を写真に撮ってハードコピーを得なければなりませんでした。隠れ線処理は、主にペンを使うプロッタを利用するときのアルゴリズムですが、かなり厄介です。隠れ面処理はもっと面倒です。これに対して、グラフィックスモニタを使う隠れ面処理は、油絵を描く技法と似て、遠景から順に塗り潰す処理手順で簡単に作図できます。ただし、或る領域を何かの色で塗り潰すには、その領域を多角形データで指定します。このとき、外形を線図で際立たせることも必要になります。ところが、ピクセルを扱うモニタでは、逆に、線の太さや線種(実線・破線など)を書き分ける線図の方に手が掛かります。この章の本題である隠れ線・隠れ面の説明に入る前に、グラフィックス装置の開発経緯に関連して、ソフトウエアにも違いがあるのだ、と言うことを、前もって理解しておく必要があります。ただし、これらの知識は、一般のユーザにとって専門的に過ぎますので、プログラミングが便利になるような工夫が研究されてきました。その一つのアイディアが、デバイスドライバです。これも、かなり専門的ですが、要するに、デバイスのメーカが異なっても、メーカの提供するデバイスドライバを切り替えるだけで、ユーザのプログラムを変更する必要が無いようにする方法です。
2009.3 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ