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13. 透視図と射影変換

13.4 射影変換に関する二三の問題


13.4.5 モンタージュパースでの逆問題

 コンピュータグラフィックスの応用として、何かの実景写真の中に、別の写真または立体図形の透視図をはめ込み、あたかも最初から存在していたかのような作品に合成する技法を、モンタージュパースペクティブ、詰めてモンタージュパースと言います。建築物や橋梁の完成予想図を作成するときの代表的な技法です。動画にも応用範囲が広がっていて、SF(Scientific Fiction)の特撮技術としてお馴染みです。或る風景写真があったとして、それを撮影した場所に行って、同じ向きで再度写真を撮りたいこともあります。人の感覚は非常に正確に同じ場所を探し当てることができますが、いつも可能とは限りません。中空から写した写真では、その場所に行くことができません。モンタージュ合成のとき、見た目に不自然にならないようにカメラ位置を数学的に決める方法は、複数の注目点の世界座標と、写真に移った像の平面座標から、世界座標でのカメラ位置と向きとを求めます。これが透視図における逆問題の一つです。数学的に考えると、カメラの定数は、座標位置(3成分)・向き(3成分)・焦点距離(1成分)、写真上の座標定義として原点位置(2成分)合計9つの未知数があります。最も一般的に扱うときは、写真上の少なくとも5点の座標(10成分)との対応を求めます。未知数と条件数とが同じになりませんので、一意の代数解を提案できません。実践的には、計算を簡単にする条件を使って注目点の数を制限できますが、原則として最小二乗法を使ってカメラ位置を求めます。この応用として、簡単な写真測量法を使って、或る離れた個所から非接触で長さを計測することも行われています(実際計算例は別にWEB上で紹介します)。
2009.1 橋梁&都市PROJECT

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