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9. 図形の変換の数学

9.4 変形の合成


9.4.3 全体として拡大または縮小させる変形

 ベクトル(e1e2e3)は、任意の向きを考えていますが、単位ベクトルとします。座標軸方向を表すときは(1,0,0), (0,1,0),(0,0,1)として式9.4に代入します。全体が一定の倍率で拡大または縮小させる変形は(表9.2のコマンドPGFACT)、三方向の変形操作の重ね合わせです。このとき、結果として得られる式9.4のマトリックスは、対角線要素が1で、他の成分が0です。これが単位マトリックスです。いま、互いに直交する3つの単位ベクトルe1e2e3を考えて、その方向別の拡大・縮小の倍率をλ1、λ2、λ3とします。この三つを重ね合わせる変形のマトリックスは、二項績の表現方法を利用すると、次のようになります。
式9.5の形が、変形を表す標準的なマトリックスの表し方です。この式の持つ重要な性質は、左辺のマトリックスが対称マトリックスになること、右辺が二項積の一次形式であることです。これは、拡大・縮小の変換を個別に実行させる順番を変えても、全体の結果が同じになる交換則が成り立つことを示します。これが回転の場合と異なる重要な性質です。λ123であると、e1e2e3の向きの選び方に無関係に、全体として一定の拡大または縮小変形を与えるマトリックスになります。また、λ12とし、λ3=0の場合は、e3の向きを軸とした円柱状の形状を、太らせる、または細くさせる変形を与えるマトリックスが得られます(表9.2のコマンドPGPAN)。
2008.9 橋梁&都市PROJECT

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