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9. 図形の変換の数学

9.3 回転の分類


9.3.3 カメラを構えて被写体を狙う方法

 対象物の回転を指定するときは、数学的に回転を考えるよりも、どの向きに向けたいかの目的が先にあるのが普通です。その場合の変換マトリックスは、対象物の座標軸の向きを合わせるだけで簡単に求めることができます。数学的に指定するときは、その対象物の持つ軸を基準として回転を指示する方が分かり易くなります。回転した後の状態は、対象物の座標軸の方向がどちらを向いているかで理解します。その例として、対象物(オブジェクト)にカメラを考え、カメラ手に持って、被写体を視野に捕らえる回転方法で理解します。カメラに付属させている局所座標系は、第7.2.3項の約束を使います。その手順は次のようにします。
(0)  カメラを手に持って水平に構えます。
(1)  その状態で左右に向きを変える回転で方向を変えます。
    これはz軸回りの回転です。
    そうすると、カメラのx軸とy軸の向きが世界座標の中で水平に回ります。
(2)  次に首を上下に振って、被写体を視野中心に捕らえます。
    これは、カメラのy軸回りの回転です。
(3)  視野中心に被写体を捕らえた状態で、頭を左右に傾けるように回転させます。
    これはx軸回りの回転です。
写真操作の用語では、この三操作を「パン(pan)、スイング(swing)、ティルト(tilt)」と言います。座標軸の選択は、カメラの方で考えた局所座標のz,y,xの順です。これは、上の段落で説明したオイラー回転の座標軸の選択順とは逆です。しかし、(0)の状態で、カメラの局所座標軸を世界座標軸と一致させておくと、この二通りの回転指定は、全く同じ結果になります。したがって、理解し易い回転指定は、パン、スイング、ティルトの順を採用します。この約束は、コマンドの引き数の並べ方に反映させます。回転角の正負の約束は、座標軸の向きを向いて右回りです。上の、左右・上下・左右の向きの用語は、正負の符号に対応します(表9.2のコマンドGROT)。
2008.9 橋梁&都市PROJECT

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