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9. 図形の変換の数学

9.2 代数学としての変換マトリックス


9.2.2 幾何学的図形として理解する

 式9.3のマトリックスは、縦(列)の要素並びの集合を、ベクトルの成分として理解します。3×4のマトリックスの左列から順に、x軸、y軸、z軸の座標軸方向の成分を表す三つのベクトルを並べ、基準点の位置ベクトルを4番目とします。コンピュータのメモリに、変換マトリックスを保存する形式は、コンピュータ言語によって約束が違います。FortranやBasicでは、A(m,n)のように二次元配列を書いて、m行n列の並びを扱います。その中身は、縦(列)の要素順、つまり、縦ベクトル単位で並ぶ一次元の配列です。C言語系では、A[m][n]と書くのですが、行の要素をつなぐ順です。こちらは、文字並びのリスト(表の形のデータ)を保存するときには自然な方法です。この約束違いを理解しておかないと、ベクトルとして扱いたい数の並びが、メモリの中で飛び飛びに保存されてしまいます。この変換マトリックスを、座標系を表すデータ集合にも使います。座標軸の向きと長さを表すベクトルは、「単位長さであること、互いに直交関係にあること、その順が右手系であること」が標準的な約束です。これを、図に表して理解することができて、原点を共有する3本の矢印記号を描きます。式9.3のマトリックスを局所座標系の表現であると解釈すると、局所座標系で表されている座標値(x,y,z)を、世界座標系の座標値(x',y',z')に変換することになります。つまり、3×4のマトリックスは、変換マトリックス座標系を表すマトリックスとの二つの顔を持つと解釈します。これが、マトリックスの使い方のときに、要素の並び順の約束を含め、しばしば理解の混乱を引き起こします。
2008.9 橋梁&都市PROJECT

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