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9. 図形の変換の数学

9.1 変換処理の分類


9.1.1 マトリックスは道具であること

 何かの図形を別の用紙にそのまま写す、または、多少の変形を加えて描き直すことは、ごく日常的な作業です。手ではなく、作図装置を介して作業をするとき、何がしかの原形のデータがあって、図形のコピーや変形を行わせます。初等幾何学では座標系を使いませんが、作図装置を制御するには座標系を踏まえた数値データで形状を扱います。図形のコピーや変形を代数的に扱うことを、大きな概念の枠組みとして変換と言います。一般的な代数関数は、媒介変数(パラメータ)xと従属変数(サブオーディネイト)yとを1対1で関係つけるy=f(x)の形を多く扱います。これを、「xをyに変換する」と捕らえます。立体図形の変換は、三つの座標値(x,y,z)を媒介変数として、三つの変換値(x',y',z')との関係を扱いますので、式の扱いをマトリックスで表す方法と算法とを理解しなければなりません。マトリックス(行列)は、線形代数の道具として、多くの研究があります。しかし、マトリックスは、考え方を整理する単なる抽象的な道具ですので、元になった幾何学的性質との対応を付けて理解することが大切です。この章では、立体図形を扱うとして、三次元での説明を主にしてあります。平面図形の場合には、三次元図形の部分空間を考えることにして、一つの座標軸成分を0とする式に直して応用します。
2008.9 橋梁&都市PROJECT

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