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7. コンピュータグラフィックスの基礎

7.1 投影法の原理


7.1.5 工業製図は幾何モデルを作図する

 立体的な対象物を表す設計図は、実物があってそれを写して図にしたのではありません。未だ実物がなく、これから製作する形状を図にしたとする意義を持ちます。したがって、図が表すのは幾何モデルであると解釈します。大きな構造物の設計図は、例えば1:50のような尺度が書いてあります。この意味は、実体の50分の1の幾何モデルを考えておいて、それを平行投影法で図に作成した、と解釈します。もし実体を平行投影で作図すれば、実物と同寸法の用紙に描くことになります。原寸で描くことを仮想しておいて、その図を50分の1に縮小する仮想の手続きで図化したのでもありません。幾何モデルであれば、必ずしも実寸法を正確に縮小して描く必要がありません。つまり、部分的にはデフォルメや強調を許します。そのため、寸法数値を書き込んで、誤解しないような注意を払った製図法を使います。図面に作成したものを、さらに縮小や拡大して利用すると、表記してある尺度の約束が狂います。そこで、図面をマイクロフィルムに撮影・保存・再利用を考えるときは、元の図面の寸法が分かるように、図面に物差し的な長さの標準を書き込むことになっています。
2008.7 橋梁&都市PROJECT

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