目次ページ  前ページ  次ページ

5. 土木工学と曲線

5.3 緩和曲線


5.3.4 クロソイド曲線

 高速道路の円形カーブの前後には、滑らかにハンドルを回して曲線区間を走行できるように、直線と円とを繋ぐ中間に緩和曲線が挿入されます。これをクロソイド曲線(clothoid)といいます。名神高速道路の線形設計にドイツの技術者が紹介して有名になりました。数学ではこれをCornuの螺旋といい、この曲線の立ち上がり部分がクロソイド緩和曲線として使われます。もともと緩和曲線という用語は鉄道の線路設計の用語であって、実用的には三次曲線が使われています。クロソイド曲線は遊園地のジェットコースターの曲線にも利用されています。もし直線から急に円に接続すると、つなぎ目で大きな加速度変化が起きて乗り心地も悪くなりますし、乗っている乗客が危険になります。Cornuの螺旋とは、曲率が、曲線に沿って測った長さに比例して増加または減少する曲線です。その全体図形は図5.2のようになります。通常の(x,y)平面座標系で表そうとしても、また極座標で表そうとしても簡単な式になりませんので、コンピュータがなかった時代には非常に数値計算の難しい曲線でした。

 Cornuの螺旋の性質を求める基本式は、フルネ・セレの公式に加えて、曲率変化が一定という条件を加えます(島田静雄、CAD.CGのための基礎数学、共立出版、2000、pp147-148参照)。曲線上の或る点での接線方向から、次の微小区間進んだ位置を求める式を導いておいて、尺取虫的に順々に座標を求めて繋いでいけば、螺旋の軌跡を描くことができます。精度を高めるためには、曲線に沿って測った弧長と弦長との長さの差を補正し、長さの差で生じる角度の差も補正します。図6.5は四回り1440度の螺旋を多角形近似で描いたもので、プログラムはGBASICで記述してあります。作図目的のために数値の精度を抑えてありますが、プログラム文がたったの16行であることに注目して下さい。


図5.3 クロソイドの作図(GBASIC実行例)
2008.5 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ