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5. 土木工学と曲線

5.3 緩和曲線


5.3.2 高さ方向にも緩和区間が必要であること

 道路でも鉄道でも、平らな区間から、いきなり角度のついた坂道や段差に接続すると、繋ぎ目で走行車両に上下方向にも大きな加速度変化が起こります。高さ方向の形状は、勾配の大小で捉えます。勾配は登りと降りがあるのですが、これは走行の向きによる相対的な区別ですので、+−の符号を付けない習慣です。製図の場合には、下る側に矢印を付けて表します。道路や鉄道の線形は、高さ方向でも緩和曲線を挿入する形状設計が必要です。走行車両の荷重も速度も小さい場合には問題を起こしませんが、大きくなると衝撃的な力が騒音や振動を起こします。段差は好ましくありませんが、結果的に段差と同じ作用になる個所があります。鉄道ではレールの継ぎ目が高速走行の最大の障害ですので、継ぎ目なしのロングレールが採用されるようになりました。また、ぶつ切りのレール接続に代えて、長手方向をはすかいに接続するなどの工夫がされます。道路橋の縦方向の線形は、太鼓橋ほどではないにしても、中央を高くするのが常識でしたが、走行性を重視する場合には付加的な縦断勾配をつけないようになりました。鉄道橋では、車両が満載になって撓んだ状態が設計高さになるようにします。そうすると、線路に進入するときに勾配変化があることと同じになります。橋梁構造物では、橋桁の伸縮変化を吸収する目地が必要ですが、これが多くの問題を発生します。鉄道橋では連続しているレールが緩和区間を構成します。道路橋では、言わば、長さの短い踏み板を並べ、構造的に長さを長くした緩和区間が取れません。支承構造とセットで、この部分の構造設計に試行錯誤が繰り返されてきました。ゴム系の弾性的な支承も試されましたが、重量車の通行時に部分的な撓み差が出る構造は、返って衝撃を増幅することが観察されています。
2008.5 橋梁&都市PROJECT

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