初等幾何学の作図法は、定木をコンパスだけを使う条件で組み立てます。具体的に作図するとなると、表4.1に番号を付けて紹介した課題を基礎的な技法とします。14番の三点を通る円の作図は、既に第1章の始め図1.1に例示しました。16番、円の共通接線の作図は、第3.6節図3.2で紹介してあります。ここでは、ページ数を抑えるために、比較的基礎的な作図例題を示します。
表4.1:初等幾何学の基本的な作図法解題
番号 |
課 題 |
GBASICでの処理方法 |
1 |
2点を与えて直線を引く。 |
2点を点の型を持つ変数P1、P2で準備しておいて、線分の型を持つ変数Eに、P1 @ P2の代数式演算で代入すると作図する。 |
2 |
与えられた線分を延長する。 |
線分は有限長さであるが、直線の型は或る基準点を通る無限に連続した直線である。グラフィックスに描くときは、グラフィックス領域を通る線分として作図する。初等幾何学では半直線の用語があるが、GBASICでは定義しない。線分の型を持つ変数Eを延長して直線の型を持つ変数に代入する L=Eは、線分を延長する。 |
3 |
中心と半径を与えて円を描く。 |
中心と半径を与えて円を描く。 |
4 |
円や線分の交わりを求める。 |
図的に交差していても、具体的に交点を計算するときは、論理積の意義を持った演算子 & を使う。 |
5 |
線分の中点を求める。 |
線分の両端の2点から 0.5*(P1+P2)で求める。 |
6 |
線分の垂直二等分線を求める。 |
線分の両端の2点から、関数 LBSEC(P1,P2) で求める。 |
7 |
点から直線に垂線をおろす。 |
点Pと直線Lまたは線分Eとで P@LまたはP@Eで求める。 |
8 |
角の二等分線を求める。 |
幾つかの方法がある。
(a)三角形では、頂角の対辺を頂角の辺の比で分ける点を結ぶ。
(b)角を構成する二直線または二辺から、向きを表す同じ長さの線分を計算し、それベクトル的に和または差を計算して角の二等分線の向きを求める。頂点を通る線分がこの向きを持つようにする。
(c)角を構成する二直線から L1+L2で求める。 |
9 |
ある点を通り、与えられた角度で交わる直線または線分を求める。 |
元の直線または線分の回転させる計算を応用する。回転を行わせる変換行列が関数として準備されていて、MROT(ang,P)*Lの積の演算で計算する。 |
10 |
三辺の長さa,b,cを与えて三角形を作図する。 |
最初に長さaを持つ線分を決めておき、その両端の点をPb,Pcとする辺を決める。Pbを中心とした半径cの円Cbと、Pcを中心とした半径bの円Ccとから二円の交点を Cb & Cc で求める。演算の順序を変えるCc & Cbは、辺の反対側にできる交点が求まる。 |
11 |
与えられた点を通り、平行な直線または線分を求める。 |
代入文で、L=P、またはE=Pとすると平行移動の処理をするので、元の直線または線分のコピーを作って、それを平行移動させる。 |
12 |
ある線分上でa:bの比に内分する点を求める。 |
線分の両端をP1,P2とし、P1寄りをaになるような内分点は、(b*P1+a*P2)/(a+b)で求める。 |
13 |
ある線分上でa:bの比に外分する点を求める。 |
線分の両端をP1,P2とし、P1からの外分点は、a>b であればP1からP2方向の延長にあり、そうでないときは反対側になり、下の式で得られる。ただしa=bの場合には無限遠になるので解はない。 (b*P1-a*P2)/(b-a) |
14 |
3点を通る円を求める |
三角形の外接円を求めることと同じである。円の中心点は、2の方法で求めた二つの二等分線から、その交点をL1 & L2 で計算する。半径は中心点と一つの点との距離を関数DISで求めて円のデータ型の変数を確定する。 |
15 |
1点から円に接線を引く。 |
点をP、円をCとして準備しておいて、P @ Cの演算で接線を求める。向きの違いは、円の符号を変えるか、演算の順を C @ Pに変えることで得られる。 |
16 |
2円の共通接線を求める。 |
円の型を持った2変数C1、C2から、C1 @ C2の演算で接線の線分が求まる。向きの違いは、円の符号を変えるか、演算の順を C2 @ C1に変えることで得られる。 |
17 |
与えられた線分を弦とし、与えられた円周角を持つ円を求める。 |
幾つかの方法があるが、基本的には三角形の外接円を求める。与えられた辺を直角三角形の直角を挟む辺となるように求めると、斜辺の中心が円の中心になる。斜辺の向きは、与えられた線分を(180-ang)の角度で回転させた直線L1として求め、線分の垂直二等分線L2との交点が円の中心位置である。 |
18 |
多角形の作図 |
或る基準長さ(単位)を元に、正多角形を作図する図学的な方法が幾つも知られている。これらは図学的には興味のある問題である。しかし、実践的には代数計算で数値を求めておいて、そのデータを使って作図する方が簡便である。これらは計算幾何学的な処理である。 |
2008.4 橋梁&都市PROJECT
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