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3. 図形要素間の演算

3.4 加算と定数倍


3.4.1 ベクトルの算法でお馴染みである規則

 ベクトルと行列を扱う線形代数では、これらを個別の数学量とした計算法とその応用が研究されています。主な応用は、連立一次方程式を解くことと、固有値・固有ベクトルの計算です。この計算の基本は、二変数間の加算法と定数倍法です。加法とスカラー倍とも言います。なぜ法の字があるかと言うと、加法で説明すると、結合律「a+(b+c)=(a+b)+c=b+(a+c)」・分配律「a(b+c)=ab+ac」・交換律「a+b=b+a」を満たす算法だからです。線形代数で扱う行列は、行数mと列数nを変えた種々の型を使うことができます。しかし算法が成り立つための制限があります。行列の加算は、同じm行n列の行列間でしか行えません。行列の積の約束は少し複雑な約束であって、積の演算則では交換率が一般には成り立ちません。割り算も定義がありません。これらが線形代数を複雑にしている一つの理由です。実は、実数の計算の場合も、割り算は交換律が成り立たない算法ですので、計算手順の組み立てに注意が必要になるのです。行列の成分を言うとき、縦ベクトル・横ベクトルの言い方をしますし、次元の用語も使いますが、幾何のベクトルとは全く別ものです。GBASICで扱う変換行列は、図形として表示できるベクトルの集合を、便宜的に行列として表したものです。算法の約束は行列の算法を応用しますが、ベクトルに幾何学的な意味を持たせた算法規則にしました。
2008.3 橋梁&都市PROJECT

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