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2. 図形要素の代数的表現

2.2 点とベクトル


2.2.3 ベクトルは代数学的に扱うことが多い

 ベクトルは概念的には幾何学的な性質を表しますが、幾つかの数を一まとめにして扱うときにも便宜的にベクトルの用語を当てます。この場合には、現実的な空間ではない擬似的な(affine)空間の点を考え、原点からのベクトルを仮想します。空間の次元数も、非現実的な4次元以上の仮想空間にまで拡張します。ベクトルは複数の成分を持ちます。これをまとめて一つの数学量とし、一つの変数名で表記し、代数的な算法を約束します。このとき、ベクトルの擬似的な積の形の数学量として、行列マトリックス:matrix)を扱う算法が生まれました。数学的に矛盾が起きないようにする一つの方法は、演算規則に線形(linear)の性質を持たせることです。ベクトルとマトリックスを扱う数学を、別名で線形代数と言うことがあるのは、ここから来ています。線形と一次とはほぼ同義ですが、線形には数学的に厳密な約束があります。それは、「0の定義、加算法、定数倍法」の3点セットです。ベクトルで言えば、原点が0の定義です。ここは、何も無いのではなく、点の性質を持っています。もう一つの例を挙げます。「f(x,y)=ax+by+c」で表すf(x,y)は一次式とは言えますが、線形式ではありません。その理由は、x=y=0としたとき、f(x,y)がcになり、0にならないからです。平面幾何・立体幾何で扱うベクトルは、現実空間に当てはめて理解できる数学量です。幾何ベクトルの積の算法にはベクトル積(外積とも言います)の約束がありますが、線形代数の場合にはこの約束を使いません。仮に二次元・三次元のベクトルで幾何ベクトルと同じ約束をしても、4次元以上に拡張して定義ができないからです。
2008.2 橋梁&都市PROJECT

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