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1. 座標系と長さの概念

1.4 コンピュータグラフィックスの座標系


1.4.1 世界座標と擬似的なカメラを考える

 図を用紙に作画する手続きは、手書きの場合は直接的ですが、コンピュータを使って作図するのは間接的な作図です。この操作は、原稿の図を壁面などに描き、それをカメラで撮影し、その像を引き伸ばして、プロッタまたはコンピュータのモニタ画面に再現させる仮想の手順を考えます。原稿の載る壁面に座標系を考え、その座標系を使って点や線の位置を指定します。これがコンピュータグラフィックスの世界座標系です。この手続きは思考モデルで行いますので、カメラも、中心投影変換で撮影する普通のカメラとは違う擬似的なカメラです。1対1の画面寸法で撮影し、平行投影の画像も得られます。プロッタまたはモニタと同じ寸法で撮影する大版のカメラです。しかし、フイルムに撮影すれば拡大・縮小が自由にできますので、擬似的なカメラのフイルムは、その寸法を考えなくても済みます。構造物のような大きな寸法の形状は、実体ではなく、それを縮小したモデルを想定し、それを平行投影法で描くと考えます。構造物の設計図は、未だ現実に存在していない形状を設計者が頭の中で想像し、これを図面に表現したものです。このときに考える形状を幾何モデル(geometric model)と言います。縮尺や倍尺を使う図面は、その尺度で作成した幾何モデルの方を平行投影で図化したものです。モデルを原寸で作図しておいて、それを縮小または拡大した図ではありませんので、部分的に見れば、実寸に比例させた表示ではありません。したがって、用紙上に描く設計図そのものは、描いたときの用紙寸法で使うのが基本です。図面をさらに拡大や縮小をすると、尺度表示が意義を失います。
2008.1 橋梁&都市PROJECT

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