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1. 座標系と長さの概念

1.2 座標系の約束


1.2.5 図学で扱う投影面

 学問としての初等幾何学は、明示的な座標系も、長さの定義もありません。平面図形の性質を抽象的に扱うときはそれでも良いのですが、現実に図形を描いて利用するときは、この二つを真っ先に解決しておかなければなりません。立体図形の投影は、座標平面に相当する投影面を考えます。標準としては、垂直と水平の二つの投影面を直交させて空間を4つに分割します。この空間を投影面の交差軸方向から見ると、奥行きのある投影面が十字線に交わります。数学では、平面図に表したこの4つの領域を象限(quadrant)と言い、左回りに第一〜第四象限のように区別します。象限は数学の用語であって、図学の方では第一角〜第四角と当てます。工業製図で投影法の区別を言うときの第一角法第三角法の用語は、どの象限に物を置いて投影するかの区別から来ています。投影面は、紙のような実体を想定していて、補助的な投影面も考えます。その投影面上に、特に座標系を考えることをしません。立体図形の投影図を作り、その寸法を表す工業製図法は、寸法を記入する方法として、適当な基準位置からの距離を示します。寸法記入の原則は実践的に定義されていて、物差しを当てて確かめられる数値に限ります。数学的な座標数値と似ているところもありますが、考え方としては住所表示法に近く、マイナスの寸法数値を使いません。
2008.1 橋梁&都市PROJECT

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