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12. 実用文書作成と話し方

12.3 実用文書のまとめ方


12.3.4 自分用に文書を残すこと

 相手を意識しないで、自分の記憶のために私的な書き物として残すことも日常的に行なわれています。隠居したら、それまでの日記などを元に、自叙伝(autobiography)や回想録的な書き物を書くことは一つの理想です。本人以外の人が、或る人を顕彰する目的で記念誌的な文書を発行することもあって、多くの人が原稿を分担することがあります。しかし、その人が生存中の場合には公表したくない情報が省かれることも多いので、資料としての価値は高くありません。日記は他人に見せることを意識しないで、自分に不利なことであっても、書き残すいさぎよさを持たなければなりません。現代はせわしくなりましたので、手帳にメモ風の記録を残す程度で済ますことが多くなりました。手帳を持ち歩き、予定などを書き込みます。ところが、税務や汚職の調査などで手帳が押収されて不利になる危険を避けて、意図的に手帳などを廃棄することも行われているようです。アメリカの大統領であったニクソンは、ウオーターゲート事件で失脚しましたが、自分に不利となる証拠を処分しませんでした。これは、上に立つ人の矜持(プライド)を保つ態度として、評価されている面があります。一般企業、大学もそうですが、上に立つ人が修める素養を帝王学と言います。民主主義社会では、選挙や持ち回りで長の職に立つ事例が増えました。それに伴って、帝王学的な素養に欠けると思われる事例も増えてしまいました。小説や随想などの形を取る書き物は、一般人は趣味的な扱いと考えることができます。私的な書き物は、形式にとらわれることのない、個人の自由な感情の移入が許されます。自分の経験を元に作成する文学作品は私小説と言われ、作文では入門的な手法です。日本の作文教育は、どちらかと言うと自由な書き方の方を推奨してきました。
2010.12 橋梁&都市PROJECT

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