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12. 実用文書作成と話し方

12.2 話し言葉と書き言葉


12.2.6 賢さと頭の良さとは別概念であること

 俗に、子供に対して「賢い」と言うのは最高の褒め言葉です。尤も、「悪賢い・ずる賢い」の種別もあります。良い意味での賢さの一つの理想は、一休さんのような、ユーモアと頓智を備えた対応ができることです。頭の良さは潜在的な能力であって、可能性の指標に使う概念です。これは、本人の責任ではなく、両親から受け継ぐ遺伝形質に関わります。賢さは獲得形質です。頭が良いけれど、賢くないインテリもどきが増えています。コンピュータを擬人化して見るとき、頭の良し悪しに当たる能力は、ハードウエア的な性質を言い、メモリの大小と演算速度の速さ、それに蓄積されたデータの多さで評価します。賢さは、ソフトウエアの良し悪しで評価します。大量のデータ、つまり知識があったとしても、それを活用する知恵が無ければ賢いとは言えません。人を対象とした教育現場では、知識の詰め込み、つまり、どれだけ多くの知識を受動的に覚えているかで評価することが普通です。知識を応用する能動的な能力が知恵です。コンピュータに悪さを仕込む悪賢いハッカーと、それ阻止する側との闘いは、一種の知恵比べです。つまり、賢さを良い方向に応用するのが理想です。したがって、悪い方にも応用する十分の知識があった上で、それを抑える倫理が要望されるのです。
2010.12 橋梁&都市PROJECT

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