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12. 実用文書作成と話し方

12.2 話し言葉と書き言葉


12.2.4 言語の研究は書き言葉を材料とする

 人工知能は、コンピュータに 人間並みの知能を実現させようという試みの総称です。この言葉の発祥は1956年です。人と人との対話に使う基本的な道具は言葉です。便宜的に、何かの人工言語を使ってコンピュータに人(ここではユーザ)が情報を伝え、コンピュータがそれに対して知的に見える情報を返してくれる、その仕組みを研究し、応用することのシステム全体が人工知能です。この手段は、コンピュータが理解できる記号体系、文字表記、つまり書き言葉、に頼ります。コンピュータは人ではないのですが、間接的には、その人工知能の開発者(デベロッパ)が裏に居て、その人に対して何かの言葉を語りかけ、それをコンピュータの処理を介してユーザに返事をするような仕組みを考えます。そうすると、コンピュータを擬人化することになります。コンピュータ側からユーザに言葉を返す方法を加えると、擬似的に対話が成立して、無生物であるコンピュータが、あたかも知能を持つような振る舞いをさせることができます。AIシステムは、ユーザとデベロッパの言語環境と同時に、コンピュータ側に仕込む知識レベルの、専門と選択の幅で制限を受けます。AIを広く捉えれば、コンピュータの利用技術すべてを含めることになりますが、通常は、幾つかの限定的な問題に分けて研究開発されています。その一つが、日本語の自然言語処理です。実践的な応用が正書法の提案であって、ユーザに対して論理的に正しい作文になるように添削をすることです。それを踏まえて和文英訳の自動化へと繋げます。元になる日本語の論理構造が不完全のままでは、和文英訳そのものが不完全になるからです。ここで、かなり深刻な問題が発生します。それは、二つの言語間で対応する単語がないときです。和語では、抽象的な概念を表す語彙が少ないのです。漢字には抽象的な語が多くありますので、明治以降、欧米に学ぶとき、漢字の組み合わせで大量の用語を工夫しました。これらの用語は、字形を眼で確認しながら音読みします。コンピュータに用語を理解させるときは、読みを必要としないと考えていましたが、対話に使うとなると、発声のことも考えたコンピュータ向けの正書法を工夫しなければなりません。
2010.12 橋梁&都市PROJECT

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