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12. 実用文書作成と話し方

12.2 話し言葉と書き言葉


12.2.2 文字表記が問題を複雑にする

 女性は、男性に比べて話し言葉を早く覚えます。女の子はおしゃまが多いのですが、これは、子供を育てる環境で必要になる、言わば本能的な能力であるようです。話し言葉は、それ記録して再現する手段に文字を使います。基本的には音を表す表音文字を使います。古い時代、日本でも文字を持っていませんでしたので、中国から表意文字の漢字を輸入したことから表記法の混乱が始まりました。最初は万葉仮名のように、中国語の漢字の読みで、日本語(和語)の音に近い文字を当てました。中国語では、漢字の読みは四声の区別がありますが、一字一音です。和語の環境ではこの区別を生かすことができないことと、発声の簡略化もあって、同音異字の語が多くなります。したがって、漢字の意味に左右されない、音だけを表す、画数の少ない仮名が工夫されました。古い時代、日本では、仮名文字は女性が主に使いました。源氏物語、土佐日記は、仮名表記であって、女性向けの作品です。ハングルも、女性が覚え易い表記法の意義がありました。仮名文字表記は、意味の取り違えも起こりますので、意味を補う目的で表意文字の漢字を部分的に当て、これを和語風に読ませる方法を採ります。これが訓読みです。例えば、動詞の「みる」に当てる漢字は「見・観・診・視・看」を使い分け、眼で見て確認しながら文字を読みます。もともとが当て字の使い方ですので、読み方の分からない表記も頻繁に起こります。日常的には人名や地名に多く見られます。例えば、不如帰と書いて「ほととぎす」と読むことは一種の知識ですが、これを漢字の教養とするのは少し行き過ぎです。知らなかったことは恥ではありません。
2010.12 橋梁&都市PROJECT

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