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12. 実用文書作成と話し方

12.2 話し言葉と書き言葉


12.2.1 自然言語は基本的に話し言葉である

 自然言語と言うときは、普通、声に出す話し言葉です。音声は一過性の現象ですので、物理的には何も証拠が残りません。口頭での取り決めや約束であっても、これを尊重することは道義です。社会が複雑になると、口頭での情報交換(コミュニケーション)が必ずしも巧く機能しなくなりますので、文字を媒介とする方法が必要です。狭い社会交流の場では、特に文字に書くまでもないので、世界的に見ると、文字を持たない言語が幾つかあるそうです。対等な間で交わす話し言葉は、無礼にならないような、或る標準的な言葉遣いの約束ができます。一般庶民の使う言葉がそうです。江戸言葉は、基本的に耳で聞いて分かる言い方です。落語や講談は、話芸と言いますが、庶民が正しい話し方を覚える場にもなっています。外国人が日本語を覚える方法は、寄席に通うのが一つの良い選択とされています。音読みで使う漢字の熟語は、漢学を基礎教養とするインテリ階級や為政者側が使うことが多く、明治時代以降は、特に海外の用語を日本語化するときに大量に工夫されました。これらは、耳で聞いても直ぐには分からないので、庶民にとっては評判の良くない言葉です。これを皮肉る表現は、落語に多く見られます。戦後はカタカナ語が増えました。これも庶民レベルでは意味不明な用語が多くなりました。使われる頻度が多く、意味の理解が定着し、国語辞書にも載ると、晴れて日本語として認知されたとするようです。外国語の単語は、日本語ではすべて名詞として取り込まれます。その使い方のとき、「なに名詞・する名詞」の切り分けをしています。このときは、元の外国語の品詞が関係しています。
2010.12 橋梁&都市PROJECT

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