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11. グラフィックス言語の解説

11.2 図を描く装置


11.2.3 濃淡図作成用の作図装置も要望されたこと

 工業製図、また、印刷物に使うイラストは、原則として線図(line drawing)で描き、写真や水墨画のような濃淡表現を使うことができません。油絵のような色違いの塗りつぶし技法も使いません。これを補う作図の技法に、枠で決めた領域を斜線で埋めるハッチング(hatching)が使われます。絵画ではペン画がそうです。プリンタは、文字の印刷を目的とする装置です。原理的には、文字は小単位の塗りつぶし画像です。昔の英文または邦文タイプライタに代表されるような、一文字単位の文字図形の活字を順に打ち付けて印刷する簡易なプリンタは、標準的な事務機械でした。この装置の重要な機能の一つは、カーボン紙を挟んで、複数枚の複写が取れることです。ドットインパクトプリンタは、複写機能が使えますので、今でも固有のマーケットを持つ装置です。プロッタとプリンタとは、一枚単位のハードコピーを作る装置です。複写が必要なときは、同じ作業を複数回行います。ゼロックスに代表されるレーザー方式の印刷機とインクジェット式のカラー印刷機が使えるようになりましたので、プリンタとプロッタとで作図原理上の区別がなくなりました。文字は小単位の図形ですので、文字集合全体をコントラストの強い濃淡図として扱うようになりました。しかし、新聞社や出版社のように、大量の部数を高速で作成するには、版を別に作成して印刷する専門の装置を使います。印刷に使う版にインクを載せ、それを紙に転写します。細い線の集合が滲んで(にじんで)線として区別できなくなることを防ぐように、表面に細かな凹凸がつくような版を作り、印刷インキが液状に広がって全体が塗りつぶされないようにします。写真のような濃淡図は、俗に網かけと言う方法で大小・粗密の細かな点の集合にした図に撮り直して、コントラストを擬似的に再現させます。初期のレーザプリンタは、濃淡図の印刷の質が良くなかったのですが、最近のプリンタは画質をソフトウエア的に調整しています。
2010.11 橋梁&都市PROJECT

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