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9. データベースと文字処理

9.5 注意して言葉を選ぶ


9.5.7 挫折と失敗の歴史がある

 データベースを作成したいとして、研究者が私的に取り組んだものは、殆んど役に立ちません。それは、利用の目的を意識しないで、単に作成することだけを目的とすることが多いからです。教育に利用することを考えると、かなり具体的な構想を立てることができます。公的な資料の整理は、それを使うことを目的とした担当の組織が行うか、外部に委託して、本務の仕事と切り離すのが効率的です。このとき、作業のマニュアルを作ります。これは、本務の仕事と関連しますので、全くの他人任せはできません。何を目的としたデータベースを作りたいのか、その需要が一般的に多いものは、名簿の管理です。データベースの参考書で扱う例題の大部分は、大なり小なり、これを扱っています。個人レベルでは、年賀状の宛名書き用に応用されたソフトを使うのがそうです。この内容は、氏名と住所などの個人情報です。量も多くないので、EXCELを利用しても役に立ちます。企業が私的に作成した個人情報が流出し、いわゆる名簿屋の間でこのファイルが売買され、ダイレクトメールや電話勧誘などで迷惑を蒙る例が増えました。しかし、考えて見れば、最も目的に合った利用方法です。商品管理などを目的としたものも、比較的需要が多いので、企業では担当者を当てることができます。自前でプログラミングできなければ、専門のプログラマに頼むこともできます。蔵書管理を例題とした、本格的なデータベースの作成例題は、アメリカの参考書にはありますが、日本ではあまり見かけません。これは、例題に使うような点数の多いデータベースは、書店などで閉鎖的に使う、やや専門的な性格があるからです。個人の環境で作成する意義はありません。いずれも、利用目的がはっきりしているものは成功する確率が高くなります。現在では、新聞社が自社の記事情報の検索に自前のデータベースを持つようになりました。1980年代、データベースの開発は、訳の分からないまま一時ブームになりました。しかし、利用する具体的な展望に欠けていたため、急速に熱が冷めて、これを育てる継続的な努力をすることに、上層部の理解が及びませんでした。その中で、日本経済新聞社だけが、地道な開発をして実用レベルに昇華させました。他の企業は、気が付いたときには手遅れに近い実力差がついてしまいました。つまり、システム構築の開発と研究は、それほど簡単にはできないのです。
2010.9 橋梁&都市PROJECT

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