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9. データベースと文字処理

9.5 注意して言葉を選ぶ


9.5.6 何をしたいかの問題意識を持つことから始める

 データベースは、現在では二つの使い方の区別があります。一つは、図書や文献の所在情報だけでなく、知的興味を満たすため、要約的な情報も扱うものです。インターネットの検索サービスがこの代表です。もう一つはビジネス活動に使うものであって、閉鎖的な環境で使います。商品管理や名簿のデータを扱うものであって、中身の正確さが要求され、頻繁に書き換え要求があることが特徴です。こちらの方を指向したものが、データベースのプログラミングの主要な課題になりました。知的興味を満たすためのデータベースは、データの追加はありますが、削除や書き換え作業を重要に考えなくても済みます。こちらを指向したデータベースの利用が、一般ユーザにとっては身近な課題ですし、これの解説がこの章の主題です。研究・開発の活動は、論文やレポートの作成が一つの区切りです。この活動を支える準備段階に文献調査(literature survey)があります。自分の研究の客観的な位置づけをし、研究主題を絞り込む場合に、関連のありそうな文献を探します。論文やレポートの最初、introduction部分は、他の論文とどこが同じで、どこが違うかを、参考文献を挙げて説明します。筆者の経験から言うと、データベースに構築したかった参考文献は、1960年代、委員会活動の一環として、吊橋の耐風安定性の文献抄録(二次資料)を対象としたものでした。この時代はコンピュータの機能が低かったこともあって、公的な活動委員会資料用としての文献抄録集は、簡易印刷で作成し、電子化はできませんでした。橋のデータそのものを保存して利用したい希望は、長い間、気持ちの上では持ち続けていましたが、個人的な研究用に資料のリストを作成するとしても、それをデータベース化する気にはなれませんでした。データベースは、私物として作るのではなく、複数の人が利用できることが目的だからです。データベースにするならば、研究の最初は、プロトタイプのデータベースの作成から始めます。多くの人の協力を得て、これを育てる形で内容の充実を図ることが理想です。一般ユーザが、パソコンで本格的なリレーショナルデータベースが作成できるようになったのは、ACCESSバージョン1の発売(1992)からです。しかし、かなり経験豊かなプログラマでなければ、このツールを使いこなすことはできません。また、プログラマ側では、ユーザが対象としている専門についての知識がありません。したがって、ユーザとプログラマとの協力が理想です。その際、ユーザ側がしなければならないことは、
@:データベース化したいデータを集めること、
A:それをどのように使いたいかのインタフェースの希望をまとめること、
B:データ量を充実させるためのユーザ協力の手続きを決めること、そして、
C:全体の継続的な管理をどこに置くかを決めることです。
2010.9 橋梁&都市PROJECT

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