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9. データベースと文字処理

9.3 文書の分類法


9.3.1 カードを使う私的な技法

 整理の実践的な技術のうち、カードを補助的な媒体(道具)として使う技法が種々工夫されています。初期のコンピュータは、データの作成にパンチカードを使っていました。それなりの便利さもありましたが、大量の紙資源と広い保存場所も必要ですので、これがディスクの利用などに代わり、現在では使われません。年賀状は、住所と氏名の情報を記録したカードです。名刺は企業の顔を持つ個人情報のカードです。これらは、他人からもらって集まるものであって、積極的に収集しません。寸法が標準化されていますので扱い易くなっています。これらを私的に整理する方法には、種々の工夫があります。最も単純には、整理の手間を省いて、適当な箱に放り込んでおきます。筆者は、これを乱れ籠方式と言っています。ゴミ箱とは違います。整理が必要になったときに、乱れ籠の中を調べます。少し整理を考えるときは、複数の乱れ籠を使い分けます。日常的には、ゴミの分別などがそうです。経験的に理解できると思いますが、分別、つまり分類は面倒なものです。メモに代えてカードに書き込んで知的な作業に使うアイディアは古くから試みられていました。川喜田二郎(1920-2009)の名前のついたKJ法、梅棹忠夫(1920-2010)の京大カード利用法は、それなりの評価があります。しかし、カードを作成して使う技法は、情報管理には基本的に不便です。整理というのは、当面の仕事の後始末をして、次の仕事に備える作業ですので、言わば、後向きです。ただしコンピュータを利用する場面で、カードで整理することを意識下においた整理モデルを考えると、理解し易くなります。一般的に言えば、メモを別に作ることは、それを積極的に利用する場面が、いつになるかが決まっていないと、制作意欲が長続きしません。
2010.9 橋梁&都市PROJECT

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