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8. 論理を表す文と式

8.1 文章論理と計算論理


8.1.5 交換則が成立しない演算則は理解が難しい

 あまり気にしませんが、算術の四則演算の中、引き算と割り算は、交換則(commutative law)が成立しない演算です。日本語の言い方では、助詞を使うことで語順と演算順とを間違えることがありませんが、英語の環境では注意が必要です。前章7.3節の後半に、COBOLでの割り算の文章表記が二通りあることを説明しました。引き算の場合にも、subtractは他動詞ですので、前置詞の遣い方、または受身形にすると目的語の並び順が変わります。例えば、(A-B)の代数式は、逆順に「subtract B from A」の構文が普通の言い方です。和製英語の感覚では A is subtracted by Bの語順の方が素直に理解できます。論理演算では、内含(implication)が交換則の成立しない演算です。数学論理で扱うことは少ないのですが、文章論理では、「if A then B」までの構文単位で一つであって、その演算結果が真であるか偽であるかの判定を言うときです。P,Qを、条件を言う文単位(命題)として「PならばQである」が真(成立)しても、逆順の「QならばAである」が必ずしも成立しない(偽)ことがあります。この区別は、定理などの証明をするときに重要です。コンピュータ言語の中で使う「if P」までの構文は、二分岐選択の判断に使い、内含の意義ではないことに注意します。While, When、Selectも、分岐先を選択する使い方です。内含の演算子(例えばImp)を特に決めなくても、「論理積・論理和・否定」の演算を組み合わせて同じ処理ができます。
2010.8 橋梁&都市PROJECT

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