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8. 論理を表す文と式

8.1 文章論理と計算論理


8.1.1 文章で説明するときの言葉遣いの約束を考える

 社会生活の場では、相手に何かを説明して間違いなく理解してもらう説得の言葉遣いが必要です。論理学(logic)は、その考え方と方法を研究する学問です。その歴史は、ギリシャ時代にまで遡る、非常に古いものです。中学校で習う初等幾何学の証明方法は、典型的な論理学の応用です。初等幾何学の定理、例えば「三平方の定理:ピタゴラスの定理」の理解については、普通、定理から得られた代数的な公式を応用していて、証明の手順を理解することから遠のいています。この定理の証明には何通りもの方法が研究されてきました。注意することは、古典的な証明は、言葉で論理的に帰納(induction)する方法を使うことです。下で説明する記号論理学と区別する意味で、形式論理学(pure logic)と言います。筆者は、文章論理学の用語が適当であると考えています。初等幾何学の面白さは、結果の美しさもそうですが、むしろ、補助線を使うなど、一種の修辞学(レトリック:rhetoric)の方法を使う証明過程に知的な興味を持つ人が多いのです。論理学の主題は、論理の構成方法の分析です。論理を踏まえて、具体的な言葉遣いを提案することが、正書法(orthography)です。表8.1は、普通に使う言葉遣いの中、論理学用語との対応を例示しました。文章論理を、記号に置き換えて表す方法を記号論理学(symbolic logic)または数理論理学(mathematical logic)と言います。ただし、普通の代数計算用に式を構成する方法とは違いがありますので、特別な記号を使います。表8.2は、決まり切った言い回しを記号に置き換える、その幾つかの表し方を並べました。これらの記号式は、眼で見て理解するのですが、声に出して言うとき、その元になった言葉を使うことが普通です。表8.1と表8.2の左欄にある見出しには、あまり眼にすることのない、特殊な論理学用語(連言、選言、内含など)を使っています。明治以降、欧米の学問を日本語に翻訳するときに、先人が工夫して提案した和製の漢字熟語です。現代ならば、カタカナ語で済ますところです。

表8.1 論理に対応する日本語
2010.8 橋梁&都市PROJECT

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