目次ページ  前ページ  次ページ

7. 外国語としてのプログラミング言語

7.3 動詞の意義と使われ方


7.3.5 数値計算を表す文書表現形式が二通りある

 コンピュータの基本的な使い方は、数値計算です。電卓(電子式卓上計算機;calculator)は、最も単純なコンピュータであって、すべての操作が手動のキー入力です。プログラミング言語を使うときは、数値計算の手順を文書に書き、それをコンピュータが解読して計算します。そのときの文章スタイルは、歴史的に言うとCOBOL流とFORTRAN流があります。計算手順を文章で表現する方法と、代数式で書く方法です。数学で言う代数式とは、「えて」記号と文字とで計算手順を表す方法です。基本的には文章表現順に並べます。また、式をそのように読みます。例えば、代数式「Y=A+B」は、「Y is equal to A plus B」のようです。COBOL流は、動詞Addを頭に置いた命令形でコンピュータに指示する「Add A to B giving Y」です。全く異なった表現方法に見えます。代数式の場合は、「Let Y be equal to A plus B」が正式の言い方であって、頭に置く命令形の動詞Letが省略されたと解釈します。数学では「Y=A+B」と「A+B=Y」とは同じ意義があって、等式と言います。FORTRANでは「Y=A+B」を代入文(assignment statement)と言い、右辺の(A+B)の部分を式(expression)と言います。COBOL流、FORTRAN流、共に、一つの文で表しますが、処理は、計算と代入の二つの単位から構成されています。処理の流れで見たとき、計算結果をYへ代入する処理は、データの移動です。文章並びで見ると、FORTRANでは右から左への逆順、COBOLでは左から右への素直な順の移動です。素直と言うのは、電卓でキーを押す順と同じだからです。日本語の表現で言うと「YはA足すBである」「A足すBがYになる」に当たります。後者の言い方が、論理的には素直です。語順並びと処理の流れとが逆になるのは英米人も混乱するようです。
2010.7 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ