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7. 外国語としてのプログラミング言語

7.3 動詞の意義と使われ方


7.3.1 自動詞と他動詞とを意識すること

 システムがCUIの環境にあるとき、ユーザは、コマンド用の単語の正しいスペルと、それがどのような実行を伴うかを知っていないと、何も仕事ができません。コンピュータ側で理解できて、あらかじめ用途を決めてある単語を、予約語(reserved word)と言うことがあります。コマンドは、コンピュータ側が持っている知識を引き出すために、ユーザがコンピュータに語りかける文字並びです。コマンドは、英語の習慣から言えば、動詞の意義を持つ予約語を先頭に置いた、コンピュータに対する命令文です。この動詞は、原則として他動詞です。日本語では、動詞が文末にきます。また、命令文の標準的な言い方がありません。命令的な言い方は、「誰かにしてもらう」使役の表現があります。コンピュータを無生物として主語に立てる構文は、命令の意義を持つ使役の相を取ることができません(第4章、表4.5参照)。翻って、この章の最初に述べたように、コンピュータを擬人化すれば、他動詞を命令文として使うことは、矛盾しません。コンピュータ言語で使われる動詞は、自動詞としての使い方をしません。コンピュータが勝手に(自動)動作を始める機能は無くもないのですが、英語の自動詞のgo, runを使ってプログラムを制御させるコマンドを使う例があります。このときは、ユーザを主語に考え、例えば使役動詞のLetを命令形で使ってコンピュータに何かをさせる構文を考えています。しかし、通常はLetを使いません。プログラミング言語のマニュアルには、動詞的に使う語の通称を、コマンド以外に、アクション(action)、マクロ(macro)、メソッド(method)、プロシージャ(procedure)、ステートメント(statement)、などと言い分けています。コマンドと言うときは、単独に実行できる小単位のプログラムの性格を持ちます。動詞的に使う他の語は、或るプログラム言語の中で、他の条件と関連があるときに使い、部分プログラムの性格があります。
2010.7 橋梁&都市PROJECT

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