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7. 外国語としてのプログラミング言語

7.1 英語の常識が必要


7.1.5 用語の意味と使い方に注意が必要であること

 市販のコンピュータ関係の参考書を見るとき、英単語を日本語訳にしないで、カタカナ用語にしたものの意味を理解することに、多くの努力が必要です。英単語をそのまま書くと(spell outと言います)、未だ手掛かりがありますが、USAなどのように頭文字だけで構成した頭字語(acronym)が厄介です。ありきたりの単語も、専門によっては特別な定義を持たせて使うことがありますので、英米人にも説明が必要です。コンピュータ関係で使う用語は、3種類を使い分けます。

1:人に説明するときに使う専門用語;コンピュータ技術はアメリカ主導型で開発されてきましたので、用語の大部分は元がアメリカ英語です。漢字を当てて分かるように翻訳した専門用語も工夫されています。しかし翻訳まで手が回らないので、カタカナ語で使う例が増えます。元のスペルが分かれば何とか意味をたどることもできますが、そうでないときは何も分かりません。日常会話で普通に使われている単語は専門用語ではないのですが、日本語の環境では特別な用語になることがあるのが厄介です。これらの英語用語は、日本ならば日本語、中国ならば中国語のように、自国の言語に翻訳した用語との対訳辞書(dictionary)が必要です。さらに、これが、どのような場面で、どのような意味であるかの用語説明(glossary)も必要です。こちらは、辞書または辞典ではなく、事典と書き分けます。英語のコンピュータ辞書は、glossaryの形で編集されていますので、日常、普通に使う単語は含まれていません。日本語で編集されるコンピュータ辞書は、事典として編集されています。見出しに、漢字用語だけでなくカタカナ語も使いますが、元の英語の綴りも載せて辞書としても使えなければ片手落ちです。

2:コンピュータを人に見立て、コンピュータ本人が理解する用語;この代表がプログラミング言語です。こちらは元の英字スペルで使わなければなりません。これが英語の方言ですので、日本人にとっては厄介な代物です。アイコンとマウスを使うインタフェースは、言葉が分からなくてもコンピュータを使うことができる方法です。これがGUI(Graphical User Interface)です。文字を入力することでコンピュータに知らせる方式は、GUIと区別するため、後からCUI(Character User Interface)の用語ができました。古くは、Man-Machine-Interfaceとも言いました。事務処理では女性が多く働きますので、Manを使わないUser Interfaceの方が、抵抗がないようです。

3:コンピュータを使う立場での、専門ごとの固有の用語;これも、日本語に翻訳した用語と、元の言語との関係が分かる事典が必要です。英語だけでなく、ドイツ語が原義である用語もあります。なるべく統一した用語にしたいとする努力は、専門ごとの団体や学術的な学会で試みられています。定義が決まった用語を、変数名などに利用します。これらの専門用語は、専門を大分類とした中での下位語です。同じ単語を別の専門で使うことがあります。英語の例で言うと、beamは物理学で光の束として使う場面と、構造力学の梁の意味とがあります。したがって、一般的な利用で使う場面では、専門別の上位語も加える必要があって、集合名詞の階層構造を構成します。
2010.7 橋梁&都市PROJECT

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