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6. 文書の作成技術

6.3 文章の書き方


6.3.5 外来語の取りこみと表記法

 海外文化を輸入して近代化に努力してきた明治以降は、読んで理解することに傾斜した外国語教育が主流でした。外国語で話すことと、外国語で作文することには、やや距離がありました。それは、話したり書いたりして伝える相手が身近にいなかったことが理由の一つです。英語で言えば、英単語を覚え、文法を理解して英文和訳の学習から始めますが、和文英訳は教育し難い環境でした。英語に直しても、「良し悪し」の評価は、native speakerでないとできません。そのような環境での外国語の習得は、実用を離れた教養を深めることに向かいます。そもそも、漢字は、日本にとっては中国から輸入された外国語の文字です。万葉集は、音を表す文字として使いました。漢字の意味の方を使いたいとき、和語の言い方を当てました。これが訓読みであって、日本語の表記法を複雑にしました。しかし、自然発生的に一応のルールができてきますので、それを標準化する試みが出てきました。常用漢字や送り仮名の付け方がそうです。官主導の正書法の提案は、権威主義的な押し付けになり易いので、その臭いを嫌う雰囲気もあります。一般的な初等教育の環境では意義があります。実用文書の場合には「この書き方がいいよ」とする適度な提案や、それを受け入れる妥協も必要です。
2010.6 橋梁&都市PROJECT

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