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6. 文書の作成技術

6.3 文章の書き


6.3.3 言文一致は理想通りには実現できない

 文書は、声に出して再現することを目的とする場合と、内容の正確な記録を眼で確かることを目的とする場合とで、書き方に違いがあります。この全体を表記法と言い、約束を決めます。表記通りには発声しない場合がありますし、発声を正しく表すこともできません。さらに、日本語では、話し言葉と書き言葉とに大きな区別がありました。書く作法と話す作法とがうまく噛み合わないところがあります。書き言葉の文体としては、口語体・文語体・漢文体、などの区別があります。書き言葉と話し言葉の差を無くす言文一致の努力は、明治以降ずっとなされてきました。近年になって、言語の種類が増え、異なった言語の、適度な使い分けを必要とする時代になりました。これには、英語のような外国語だけでなく、プログラミング言語、さらにはグラフィックス言語、そして、後で解説する編集記述言語などがあります。日本語の環境に限っても、漢字熟語は同音異義語が多いこともあって、眼で文字を見ながら意味を確認する傾向が強く、話し言葉で情報を伝える技術と整合しないことがあります。外来語をカタカナ用語で多く使うようになりました。しかし、語の意味を別に覚えなければ分からない不便さがあります。英語でも話し言葉と書き言葉の違いはありますが、日本語ほどに大きな違いがありませんので、話した言葉を、多少の修正をして、そのまま文書に落として利用することが行なわれています。そのため、口述筆記(dictation)と速記(shorthand)は、秘書の技能として必要とされています。タイピングの技能と相まって、話し終わった段階で速記録ができていることがあります。
2010.5 橋梁&都市PROJECT

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