目次ページ  前ページ  次ページ

6. 文書の作成技術

6.2 言葉の理解から作文へ


6.2.3 文書の作成には三つの要素がある

 文書の作成には三つの要素がある 文字で表すことが作文です。作文教育をするには、「これが正しい書き方である」とする規範が必要です。これが正書法(orthography)の原点です。それに先立って、文書全体をどのように作るのかの全体概念を踏まえます。文書の作成には三つの要素があります。第一:正しい文章、第二:文書の書式、第三:体裁です。実用文書を作るときは、明確な目的があります。数枚以内の手紙、お知らせ、お願い程度のものから、ページ数の多い、形のある書物を作る場合も含め、一般には複数の人手を経て文書を作成します。基本的な作業は、上の三つそれぞれに別の人が当たります。文章原稿を書く人、それを決められた書式に編集する人、版組みと印刷に当たる人、体裁を整えて製本を担当する人、最後に発行に当たる人です。日本の書物は、この情報が奥付に載ります。ワードプロセッサが無かった時代、著者は、草稿を400字詰めの原稿用紙に手書きしました。この原稿を編集者の所に持ち込めば、これに編集者が書式情報を書き込んで、版組みの人に渡し、残りの作業をそれぞれの専門家が処理してくれました。校正の段階で著者の所に戻るループがあり、校正情報を書き込みます。編集と校正に使う記号などは、標準の約束が日本工業規格(JIS)に載っています。普通の人は書式と体裁については漠然とした知識しか無くても済みました。従来の作文指導は、このような作業環境を前提としていることを理解しておきます。ワードプロセッサが使えるようになって、小部数の簡単な文書は、すべて自分で作成できるようになりました。それは第二、第三の作業も自分でするようになったことです。そうなると、いままで専門家がしていた作業に関わることになりますので、特殊な専門用語を覚え、ワードプロセッサの操作に慣れ、パソコンを使うことに悪戦苦闘するようになりました。
2010.6 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ