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6. 文書の作成技術

6.2 言葉の理解から作文へ


6.2.1 作文教育は難しいこと

 言葉、それも、話し言葉を覚える過程は、受動的に耳で聞くことに始まります。子供は、文字を使わなくても日常生活には不自由しません。書いたものを読んで中身を理解するには、字形としての文字を覚え、その読み方を学びます。他人が書いたものを読んで理解する段階の次は、自分で作文することに挑戦します。このとき、明確に作文の目的が必要です。コンピュータのプログラミングは、コンピュータに理解してもらう文書を作成することです。義務教育段階の児童生徒は、社会生活の外にいます。覚える方に重点がありますので、相手に何かをしてもらう、その意思表示の目的で作文させる教育をしません。観察したことを客観的に作文することも難しいものです。普通には、日記など、自分を中心とした行動の記録か、感情移入の作文指導です。具体的な指導に困って「思った通りに書きなさい」となります。それを評価する方も、客観的な判定方法を持ちません。大学教育になると、論文やレポートのように、論理的な内容を持たせる作文技術が必要です。これを系統的に教育する科目を、technical writingと言い、日本以外では、ほぼ必修の教養科目です。その理由は、種々の言語環境からの学生が集まりますので、標準的な形式での表現法が重要になるからです。目的意識を持った文書を実用文書と言うことにします。これは、論文やレポートもそうですが、日常的には手紙がそうです。特に、企業で使われる手紙をbusiness letterと言い、企業の顔を持って発信されます。企業では、秘書課に当たる部署がこれに当たります。文書作成のような実務に関係した教育は、以前は商業学校のような実業学校が担ってきました。学問の衣を付けた教育の方を有り難がるようになって、作文技術のような実務教育が軽く見られるか、手が回らなくなっています。
2010.6 橋梁&都市PROJECT

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