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5. 形容詞・副詞・助詞の話し

5.2 形態素解析の位置づけ


5.2.6 完全無欠な形態素解析を期待しない

 仮名漢字変換は、上のコード変換とは質の違う変換です。1対1の対応ではなく、複数組のコード間の変換になるからです。漢字は、音読みと訓読みの区別があり、逆向き変換で見ると同音異義語の選択があります。どれとどれとが対応するかの判断は、最終的には人が決めます。それを助けるのが仮名漢字変換のソフトです。ある長さの仮名文字の並びを形態素であるとして、変換候補を絞り込むことができれば、変換の能率が上がります。人為的に形態素単位、例えば熟語単位、で変換候補を探すことが最も基本的な方法です。この章の表題の形容詞・副詞・助詞は、語幹と仮名の組み合わせがありますので、仮名部分の扱いが形態素解析で重要になるのです。しかし、一般のユーザがいつも形態素を意識した作業をすることは無く、一つの意味を構成する文字並び(文節)が繋がった連文節の仮名文字並びが、変換の対象です。そうであると、文字並びを形態素に分解する処理を先行させた、形態素解析が必要になります。平たく言えば、電報文を意味のある仮名漢字混じりの語に並び変えることです。実用的なワープロソフトは、多くの研究グループが競って製品を発表してきました。その成果が積み重なって、便利さは向上してきました。しかし同時に、欠点も指摘されるようになりました。ワープロソフトは、一般ユーザの多用な要求を満たすように努力が重ねられてきました。商業ソフトは、ソフトウエアの中身を公開しません。文書の校正は、最終的にはユーザの責任で行いますので、親切と思って組み込まれた人工知能(AI)の機能が、はた迷惑やお節介に過ぎることも起きます。AI機能は、ワープロを使い込んでいくと、ユーザのクセを取り込んで、変換効率を上げるように、内部の組み込み辞書の用語選択順位が変わります。この機能はリセットができませんし、辞書の取替えもユーザレベルでは手が出ません。用語の質の違う別の文書を作成するとき、前に作成した文書の用語が優先されるAI機能は、手戻りの労力を増やすのです。要するに、ワープロの仮名漢字変換は、完全な自動化ができません。幾らか不便であることを納得の上で、ワープロと付き合う度量が必要です。
2010.5 橋梁&都市PROJECT

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